前回の続き
普通の常連客から、悪質客へと変貌を遂げていったこの男。
1日で海に10万も突っ込んでいて、それが毎日となればさすがにキツイはず。
こっちとしては売上になるし、ありがたいことなのだが、やはり毎日何万も負けていくこのドドリアにスタッフもちょっとづつ違和感を覚え始めていた。
ドドリアから最初のクレーム
これまで無言で万札を溶かしてきたこのドドリアであるが、ある時こんなことを言い始めた。
「近くで打ってるオヤジが台叩くから注意してくれ。」
海シリーズというのは、年配客にウケている機械であり、それはそれは多くの信憑性のないオカルトが蔓延している。
例えば2・4・6・の図柄で止まったらその後200回転はハマるであるとか、100回転以内に魚群が2回くるとその後爆発する。
とかそういう風の噂にもならない小ネタが数多く存在する機種なのである。
この一環で、ロングリーチの時にタイミングよく上皿を叩くとそのまま図柄が揃うというオカルトが存在する。
これは一番有名なオカルトじゃないかと思います。
黒潮リーチ →ぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅん・・・
ドン!!
みたいな光景はローカルなしで全国の海で見られるのではないでしょうか。
今回はたまたまドドリアの近くで打っていた年配の方がそれを強めにやっていたということである。
「ドドリアさん、すいません。今はそんなに強く叩いてないみたいなので、
オヤジさんが次やってるの見かけたら注意します。」
「まあ良いんだけど、うるせえとこっちもイライラしてくるからさ。頼むよ。」
この日はそれで終わったのですが、次の日からも台叩きに関するジャッジメントは一段と厳しく、スタッフにアイツを注意しろ!あのババアを注意しろ!
などとかなりピリピリしているような状況でした。
第2形態
毎日呼ばれては、アイツが台叩いているといったことを言ってくるので、さすがにスタッフもドドリアに対し疲弊している様子であった。
このままだと良くないなと思ったので、
お客さんへ台叩きへの認知をしてもらうためとドドリアへの体裁のために、
「台を強く叩かないでください」的なPOPを各台に貼ることにした。
これによって、台を叩くお客さんがいたら「こちらにも書いてあります通り~」
と声を掛けやすくなるというわけである。
しかし、こんなPOP程度でハウスルールが厳守されるのであれば何も苦労はない。
じいちゃんばあちゃんが台間の小さなPOPなんぞ見るわけもなく、台叩き撲滅への期待は崩れることになった。
そうなるとドドリアの戦闘力は増すばかりで、もはや自分の台など見向きもせず、来る客来る客の様子をジロジロと伺うようになっていった。
そしてついにドドリアはスタッフがいない時に叩いている客を見つけると、自分で注意するようになったのである。
「おい、あんたさ、ここに叩くなって書いてあんだろ。台叩くんじゃねーよ。」
というように、他の年配客へ威嚇するように声を掛けていったのです。
「わかった・・・あんたの言う通りにしよう。ただ子どもたちには手を出すんじゃあない。」
そう言って、海の常連さんは少しづつ離れて行ってしまいました。
「すいません。ドドリアさん。注意はこちらでやりますので、また何かあったら教えてください。」
私はスタッフが注意しなければいけないことを、お客さんにやってもらっているというズレた罪悪感から、ドドリアに対しこのように言ってしまったのである。
「へっオレがおまえらの代わりに注意してもっと店を良くしてやるよ。」
多分この時点でしかるべき対応をドドリアにしなければいけなかったのですが、私もそうだし店長もこの事態について緊急で重要な案件だと捉えておりませんでした。
さらに続く・・・
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